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4日ぶりに父のいるケアハウスを訪ねた。 うつらうつらと食堂の椅子で居眠りをしていた。程よい人数の入居者と、多くの職員が手の届くお世話をしている様子をいつも感じている。父も「ここの人はみんな良くしてくれるよ」と言っていた。お値段もいいが、父はこの数日の間に、懸命にリハビリに励んでいたようだ。部屋の中に、車椅子のほかに二台の歩行器が増えていた。背中の痛みも次第に良くなりつつあるようだ。今日、ベッドから立ち上がる様子を見ていてそう感じた。車椅子をやめて、歩行器で所内を歩き周り、足慣らしの訓練をしていると職員の方から説明を受けた。予定通り、月末には家に帰れるだろう。 富山に行っている間も、友人や、家族や、数人の方々が入れ替わり立ち代り父を尋ねてくださったようだ。その様子が、メールや電話で伝わってきた。父はなんと幸せな人だろう!こういうのを人徳と言うのだろうか。 人に憎まれたり、嫌われたりすることが父にはほとんどない。いつもどんなときも、誰でも人を分け隔てなく受け入れる性格が、みんなに愛される理由かもしれない。ときどき、冗談を言って人を笑わせたり、人をうならせるような話をして人の心をとりこにする人だ。時々にぴったりの名言格言が出てくるのも、頭の中にいっぱいそれらが染み込んで記憶にインプットされているいるように見える 今日も面白いことがあった。夕食時間が近くなったので私が引き上げようとした時だった。 父は歩行器で食堂に向かって歩き始めた。そこへ、すずさんが徘徊しながらやって来た。父と同じ年のすずさんは徘徊癖があり四六時中所内を歩き回っている。認知もかなり進んでいるようだが、おリンゴのような真っ赤なほっぺたをしいてとても可愛い。「すずさんはどこで生まれたの?」と聞いたら、「伊勢原です」と答えてくれた。そこまではまだ良かったが、「すずさん、年はいくつですか?」と聞いたとき「36歳です」と返事が返ってきたときは、やっぱり認知なんだなと思った。そのすずさんが父の前をうろうろ歩き回っていると、父がすずさんの手を引いて歩行器の中に誘った。父の半分ぐらいしかないすずさんの体が歩行器の中に入ると、手すりですずさんの顔は半分ぐらいしか見えなかった。父の大きな体の前に小さなすずさんが立ち、二人で歩行器を押しながら歩いている様子を、みんなが微笑ましく眺め拍手喝采だった。 父のちょっとした思い付きで、すずさんに新しい発見が増え、みんなも幸せな光景を見て刺激になったようだ。誰とも口を利かないほかの男性のお年寄りと比べると、父は出しゃばりもせずみんなと楽しく交流をしている様だ。 期間限定の入居に比べ、そこを終の棲家としている方がたの暖かさの中で過ごした数日は、父にとっていい冥土のお土産になったことだろう。 |
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